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2014年7月15日 (火)

不安げに頬を撫でてみる

 

 

  幼い頃から、桜子にはお気に入りの場所があった。街の外れの小高い丘で、街の全景を見渡すことが出来る。それでいて木々が生い茂っているから、外から見ら れて一人だけの時間を邪魔されることもない。彼女は昔から、ゆっくり休みたいときや一人になりたい時は決まってここに来ていた。高いところから普段自分が 生きている場所を見下ろすと、少しだけ優越感を感じられるのだ。神に近い存在にでも成ったかの様な、束の間の感覚は酷く気持ちが良かった。また逆に、そう することで自分が非常にちっぽけな存在に思えることもあった。自分はこの街に生きる一人の少女でしかなく、自分が何を感じどう生きようと、この街を動かす 大きな歯車には何の影響も及ぼさない。そう感じると、自分の悩みや困り事など取るに足らないように思えるのだ。

 どちらにせよ、彼女にとってこの場所は救いの場であった。また救いなど必要ない時でも自然と足はここに向く。定番のお散歩スポットなのであった。

 

  木の幹に支えを求めながら丘を登りきると、頂上に一本の山桜が生えていた。正に満開で、美しさの盛りである。通常この桃色の花はソメイヨシノよりも早く開 花し、散ってゆく。故にこの時期のソメイヨシノの開花と時期が合致することは無い。然しこの丘の上は別だった。街の平均標高よりも70mも高い位置にある 丘の頂上は、当然気温も低い。だから下の世界よりも開花が遅いのだ。

 桜子は山桜の幹に手をかけると、一番下の枝にぶら下がった。そしてそのまま懸垂をするような形で、自らの体を引き上げる。硬い幹に腹が擦れる痛みを感じながらよじ登ると、桜子は幹に背中を預けて一息ついた。

 

  ダイエットの必要性を感じた。春休みに訪れた時よりも、木登りが大変になっていた。勉強に熱中し始めたこの一週間のうちに、少し太ったのかもしれない。勉強中の感触は彼女の癖だ。

「痩せなきゃ。受験終わる頃には豚になってる」

 自分に言い聞かせるように呟いた。不安げに頬を撫でてみる。脂肪が増えた感触はしなかった。だが油断は禁物だ。

「そんなにダイエットが必要な体型には見えないけどね」

 彼女の呟きから一瞬の後、突然声が降ってきた。何が起きたのか刹那の内には理解できず、桜子は体を硬直させた。目を見開いて唇を引き結んだその様子が滑稽だったのであろう、低い笑い声が聞こえた。

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